ご存知の通り、パン屋の朝は早い。空が白み始める頃から、すでに工房ではせっせとパン作りが始まっている。ここ「カウベルン ムカイ」は、町で一軒しかないパン屋さん。地元の人にとって、なくてはならない存在である。
焼き上がりを知らせるブザーが次から次へと聞こえてきた。パンが焼きあがっている合図だ。店内の奥を覗けば、ひた向きにパン作りに励む店主・迎井さんの姿が。以前は福岡や熊本で全く違う仕事をしていたそうだが、家族や自分の時間を大切にしながら、地元で仕事をしようと一念発起。そこで思いついた業種が、日常の食生活で欠くことの出来ないパン屋だ。
基本的な製造方法は学んだが、試行錯誤の日々が続く。知り合いのパン屋を転々としながらノウハウを学び、さらに自分なりにアレンジを加えて店の味を作り出した。「今の味にとどまってはいけない。美味しいパンを味わっていただくために、常に少しずつだが改良を重ねているんだ」。パンに魅せられ1995年にオープンして以来、今では職人としてすっかり板についている。
決して広くはない店内には、定番の食パン・手作り焼きたてパンを筆頭に、お惣菜パンや菓子パンが所狭しと並んでいる。
アレルギーをお持ちの方でも食べる喜びを味わってほしいと、卵不使用のパンや、九州産米粉100%で焼き上げた米粉ドーナツ、さらにはバター・食塩・保存料を加えることなく、てんさい糖とくるみだけで作ったシンプルなキャラメリゼなど、要望をカタチにした商品のラインナップが年々充実。来店は地元のお客様がほとんどだが、福岡県内など遠方から定期的に買いに来られる方も。
この日も朝早くから、パンを求めてお客様が入れ代わり立ち代わり。
目をキラキラと輝かせて、「さあ、今日はどのパンにしよう」。
パン職人としての腕前もさることながら、やはり“家族経営・チームワーク”があってこそ。
「大変な時期もあったけれど、地域のお客様と家族に支えてもらい、27年以上もパンを作らせていただいている。ありがたい」とちょっと恥かしげに迎さん。
今日も小さな店内には、焼きたてのいい香りが漂っている。
カウベルンムカイ
佐賀県東松浦郡玄海町新田1555-14
TEL 0955-52-5405
7:00~17:00(※売り切れ次第閉店)
日曜定休・祝日休