始まりは、もてなし好きのお母さんが自宅の隅につくった、回転焼きとかき氷の小さな店だった。その後、1970年に拡張し、現在の前身「ふくみ食堂」を開く。毎日腕を振るうちゃんぽんは、瞬く間に評判を呼び、地元を越えて広がりをみせる。
高校卒業後、広島で8年間の料理修行を終え、25歳で玄海町に戻った息子・光浩さん。店の味を受け継いだが、馴染みのお客さんたちに自分の作った味を認めてもらうまで、約10年の月日を費やしたそう。お母さんの作るちゃんぽんは、それだけ、人々の胃袋を虜にしていたというわけだ。
1995年の建て替えを機に「お食事処 ふくみ」と店名を一新。昼は食事処、夜は宴会もできる店として、家族3人で切り盛りしている。定食や丼もの、ラーメンなどもあるが、やはり名物は創業当時から作り続けている「ちゃんぽん」。
豚骨と鶏ガラをじっくりと炊き出し、2日間かけて完成させる“呼び戻しスープ”をまずは一口。
何十年も継ぎ足されてきたとあって、まごうことなき味わい。この深みのあるコクこそが、長年親しまれてきた「ふくみ」の味だ。スープの余韻に浸りながら、お次は具材と一緒に麺を啜り入れる。たっぷりの野菜と地元の製麺所「手塚製麺」のもっちりとした麺、そして呼び戻しスープが三位一体となり、箸がすすむ美味しさ!
ボリュームたっぷりの唐揚げもこの店の人気メニュー。ゴロリとしたビッグサイズの唐揚げが皿一面を覆い尽くす。
「採算は度外視だよ。満足してもらえればそれでいい」と光浩さん。もてなしの心は母親譲りである。御歳82のお母さんは、今も現役で調理を担当されているそうだ。
「今後も続くかぎり、細く長くやっていきたい」。
創業以来半世紀、お腹を満たし、心も満たす「ふくみ」の味は、これからも紡がれていく。
お食事処 ふくみ
佐賀県東松浦郡玄海町普恩寺854-3
TEL 0955-52-6508
11:30〜14:00 / 17:30〜21:00(L.O.20:30)
定休日:月曜日・第三日曜日